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若いママさんへ


うつぶせで育てると良いという

アメリカ式育児法で
赤ちゃんが窒息してしまいました。
心臓が強くなるというのですが
そんなに急がなくたって
子供の身体はきたえられます。


わたしは四人の子供を
みんな大の字にねかせて
育てました。
うつぶせが悪いとは言いません。
でもママだってお洗濯や
台所にも立たなきゃなりません。

そんなとき赤ちゃんが
自分のおくびで支えられるのか
お顔に掛かったお布団は
自分ではらえるのか
いつのまにか目がさめて
ハイハイしても
危ないものはないかしら
つぎに起こるあらゆることを考えて
初めて目をはなせるんです。


一粒のピーナッツ
一粒のアメちゃんだって
赤ちゃんのおのどに引っかかります
どんなに心をくばっても
過ぎるということはないのです。
若いママさん、たいせつないのちを
だいじに育ててくださいね。

(S44.6.11)

 

 

おしょくじ


スプーンで
こぼしたごはんを
むっちりとしたお手々で
つまんではお口にいれる


トマトもサラダも
うなぎもカツも
たった八本の乳歯しかない
お口におしこむ


言葉にならない言葉で
ほしいものを指差し
こちらの言葉は何でも分かって
「ウンウン」「イヤイヤ」
でおへんじ


やがておポンポが
いっぱいになると
みちたりた笑顔を
家中にふりまく

(S44.7.27)

 

 

遠い日よ


雑草をぬいていると
思いがけない花にめぐりあう


ふと手をのばしたところに
ゆれている赤まんまよ


遠い日の
ままごとあそびのお赤飯


一つぶ一つぶほぐしてためて
食べるふりした赤まんま


むらさきいろに手を染めて
色みずつくった露くさよ


真赤なヘビいちごは
幼い心に恐怖をのこした


今となってもよけて通る
けれどちょっぴり懐かしい


虎の尾でくすぐりっこの
はずんだ声が聞こえそう


雑草と共に育った
幼い日よ、ああ遠い日よ

(S44.8.14)

 

 

レッスン


娘がピアノのレッスンをしている。
難しい曲が
いつのまにかこなれて来て
暗譜で弾くようになると、
私の心まではずんでくる。


新しい曲を
真剣なまなざしで
弾いているとき
とりくんでいる
意志の力が伝わって来て
少女の美しさが満ちている。


幼い時から
あきたり、やめたり、無理をせず
ともかくつづけてきた。
本当にやりたいと思ったときに
間に合えばいい
そう思って見守って来た。


長い指のタッチもいいし
心をこめて弾くようになった。
「もう少ししたら
お母さまと連弾の曲を
さがしましょうね。」と
先生がおっしゃる。
夢見ていたそんな日が
近づいて来たようだ。

(S44.12.7)

 

 

ねんねこ


師走のホームで
電車を待っていたら
ねんねこで
赤ちゃんをおんぶしている
若いお母さんがいた。
赤ちゃんはおせなかで
安心しきってねむっていた。


私にもこんな日があった。
母子ともどもすっぽりと
あったかいねんねこが
わたしは好きだった。
ねんねしてずっしりと
重くなるあの感じは
何ともいえず幸せだった。


子供たちも
「はんてんでおんぶ。」といっては
幼児になってもおぶったものだ。
今度わたしがねんねこで
おんぶするのは誰かしら。
いつの日か生まれる孫かもしれない。
身軽になった自分の背中を
あらためて想い出した。

(S44.12.7)

 

 

寒椿


十五年前
苗木売りのおばさんが持って来た
一尺たらずの寒椿。


あれは海の近くに住み始めた
年だった。
子供たちを自然のふところで
育てたい。
そんなねがいをこめえt
都会を離れた年だった。


空の高さと海の蒼さが
こころにしみた。
朝の庭に
浜千鳥が遊びに来たし
わたしも若かった。
砂山をころげまわって
子供たちは大きくなった。


小学校の四年生だった長男も
二年生だった次男も
大学生となり
ヨチヨチ歩きだった三男は高校生に
そのころまだ生まれていなかった娘は
もう九才になった。


二、三日前
松の落ち葉をたきながら
ふとみると一輪の花があった。
そして今日はもう三輪
えんじ色の初々しい
花を開いてくれた。


今はもうドライブ・ウェイは
排気ガスで
浜千鳥もこなくなった。
砂山は次々に分譲されてしまった。
けれど寒椿は
こぶしほどの幹となり
びっしりとつぼみをつけて
今年もまた
おそ秋のうたをうたってくれる。

(S44.11.3)

 

 

姿勢


誰にもたよらずに
自分の力の最大限で
可能なことを考える。


あらゆる情勢の変化を
計算に入れ
最低線は確保する。


最初から最後まで
自身の責任で
背負って行く姿勢でゆけば


たのみごころに
わずらわされず
期待はずれもないでしょう。

(S45.2.1)

 

 

プラン


一つのプランが
挫折したからといって
あわてることはない。
力足らずに
むくわれなかろうが
思いつめることはない。


波にたゆたうように
大らかに、無心に
自身の力をみつめなおし
努力すれば
実現性あるプランに落ち着いて
夢が夢でなくなる
時もこようもの。

(S.45.2.1)

 

 

時は流れる


時は流れて
ひとり娘は少女になった
黒い瞳が夢を見て
花びらのようなくちびるは
唄い、笑い、おしゃべりをする。


つややかな頬はバラいろ
髪は肩までながく
クリスマスには
パンタロンや、
ひざまでのブーツをおねだり
学芸会には髪をカールしたいという。


ミニミニ娘の
心のうごきが
新鮮なよろこびを母に与える。
もう十年もしたら
手放さなければならないのだから
心ゆくまで愛してあげよう。


お振袖の花嫁衣裳も
ウェディングドレスも
両方着せてみたい
そんな想いが夢のように
ベールにつつまれて感じられる。
けれど時は流れて
やがてその日がくるのでしょう。

(S45.2.16)

 

 

うた


素朴なうたを
うたいたい。
いまさら
偉そうなことを言うこともない。
ありのまんま
感じたまんま
誰にも分かる言葉で
心の詩をかいてみたい。

(S44.12.23)

 

 

燃えつくす


椿よ、つばき、寒つばき
一本の樹が
花束のように
数知れず花開く。


冬の空に
燃え立ち、身をこがす。
かなしいまでの美しさが
わたしをとらえてはなさない。


人影恋うた年ごろに
むねの想いに
泣きぬれた
遠いあの日がよみがえる。

(S.44.12.27)

 

 

 

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