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寒椿
 


澄み切った 冬空の下
耐えて耐えしのび
燃えて燃えさかり
美しく咲いて散る
寒椿のように
女の一生を終わりたい――。

           (1985.1.23)

 

 


こわいほどあふれる言葉
これは私の心です。
疲れるかもしれないけれど
しばらく身をまかせましょう。
ポロポロとあつい涙を
こぼしながら
言葉があふれてしかたないのです。

          (1985.3.31)

 

 

なぐさめ


悲しいうたが
はやるのも
なぐさめを求めるから。

嬉しいうたが
はやるのも
心の安らぎが欲しいから。

心のふれあいが
どんなになぐさめになるか
あなたも私も
わかっていますよね。

           (1985.3.31)

 

 

方策

 


心を澄ませてみると
裏も表も上も下も
横も縦もみんな見えてくる。
普通には見えない真中の
シンまで見えてくる。
そして一番ベターな
方策がたってくる。

         (1985.4.7)

 

 

永遠

 


一日一日を大切に
一時一時を大切に
生まれてから永遠の世界へ
ゆくまでの道のりを
一生懸命いきてきました。
永遠、それはどんな世界か
わかりません。
けれども心の世界なのでしょうね。
肉体的には
不幸のどん底にいるようで
こんなに心は満たされて
いるのですから。

         (1985.3.31)

 

 

安らぎ

 


すさまじい病にとりつかれてから
二年の歳月が流れ、
三年目に入りました。


医師や家族や友人の
愛情の海にひたって
生きてきました。


二度の入院の後
今は病院に近い新宿で
闘病生活を送っています。


都会のど真ん中にも
故郷はあります。
あったかい心が一杯です。


生きるも死ぬるも
神様の思し召し、
ゆったりと心地良いゆりかごの中で
子守唄をきいているような
嬉しさの中にいます――。

(1985.3.30)

 

 

ふるさと賛歌

 


はるかなる山の峰に雲が流れ
鼻の香り頬をなでて
風のささやき心にしみるよ
故郷の野山を思えば
なつかしき思いこみあげ
なにがなし瞳がぬれる


かげろうのもえる畑は
れんげ草と菜の花のじゅうたん
ひばりたちのさえずり
花つみの子供らの歌声は
空にひびくよ
大地のぬくもり燃え立ち
身も心もはずませ
故郷のあたたかさ胸にみちるよ


人はみな心の故郷をもち
大地の安らぎに身も心も憩う
自然の素晴らしさにいだかれれば
おさな児のように素直になれる
故郷は幼き日のゆりかごよ
思い出の花かごよ
陽が昇り陽が沈む
自然のいとなみの中で
あこがれに瞳をぬらし


若き日の愛と夢を
はぐくんでくれた


故郷の山を思えば
母の胸のように恋しく
人生の旅路ゆく人の心に
故郷はいつも優しくあたたかく
愛の思い出よみがえる
故郷の山よ川よ風よ花よ


ああ言葉もなく永遠になつかし

(1985.3.29)

 

 

ただよう

 


人間として
何かにぶつかった気がするのです。
見えないけれど
えもいえない
大きな豊かさにただようように
身も心も任せています。
こんな幸わせが
あったのでしょうか。

(1985.3.31)

 

 

はずむ

 


声がはずむ
心がはずむ
言葉がはずむ
電話のむこうから
「とっても病気とは思えない」と
おどろきの声。
心にかけてくださった方々へ
元気な姿をみてもらう日も近い。
それは春の足音のように――。

(1985.3.30)

 

 

あふれる

 


胸の中から
あふれるように言葉がわいてくる。
これはなに?
六十年生きてきた
私の心のほとばしり。

         (1985.3.31)

 

 

生きる

 


長いトンネルの中から
ゆく手にひとすじの灯が
見えてきました。
今、光あふれる中に
あなたの笑顔がみえます。
愛する人達が呼んでいます。


死の淵をさまよいつづけた年月
ただ美しく死ぬことばかり
考えていた日々。――
あなたからの一通のお手紙が
生きることの素晴らしさに
眼をむけさせてくださいました。
行間にあふれるはげましが、
生への執着を蘇らせてくれました。


今、春の日におずおずと
とまどいながら
それでも確かに、
「私は生きる」という意思を持って
歩み始めます。
ありがとうございました。

(1985.3.6)

 

 

心をつくし、手をつくす。

 


アメリカは真夜中。
日本は昼時間。
何度も国際電話で
父を案じる息子の声が
親友を案じる人の声が
日本のオフィスに届く。


カリフォルニアの風にのって
故郷に遊ぶもいい。
一万キロの雲にのって
日本にこられるのもいい。
心をつくし、手をつくして
一つの生命が灯をともす。


アメリカは夜半。
日本は翌朝。
ファクシミリが届く。
二度の手術のデータが届く。
待っていた私の娘が、書類を抱いて
日本の名医の家にかけつける。
母のことを案じつづけた
娘の心があふれる――。


見知らぬ人の親思う、
友思う心が痛いほどわかるから、
時間も空間もとびこえて
愛が地球をかけめぐる。
最期まで手をつくし、
心をつくしてみようではありませんか。
みんなの涙がかわくまで――。

(1985.3.30)

 

 

時の流れ

 


悲しみが深すぎるとき
人はなぐさめの言葉もなく
そっとみつめるだけ。
生きて愛して傷ついて
思い出の大切さを知ったとき
時の流れは大きな救い
絶望のふちにたたずんでも
やがて生きてゆく力がよみがえる
泣きたいときはお泣きなさい
つらくたって悲しくたって
生きてゆかなければならないのだから。

(1984.3.26)

 

 

愛情

 


心から愛して心から心配すれば
思いがけない力で
カバーしてあげられる。
いい道を拓くでしょう。

(1985.4.7)

 

 

還暦

 


還暦の日を
こんなに素晴らしい感激をもって
迎えられるなんて思いもよらなかった。


死の淵からやっとこさ
はいあがって
とてもムリと思っていた
誕生日を迎えて
あゝ還暦なんだと思った途端
涙があふれて止まらない。
あつい涙はおえつとなって
私ののどを心をうるおしてくれた。


たくさんの詩が生まれ、
いつのまにこれだけ燃焼できる力が
体内によみがえっていたのかと
不思議にさえ思われる。


ありがたい 本当にありがたい
私の人生にとって
これからの生きる日々は
言うことなしの
味わいとなるでしょう。

(1985.3.30)

 

 

天国

 


「人間はみな天国にゆける」
なぜかそう信じている私は
とても気楽なのです。


ホラ小学校の貧血などで
たおれたお友達から、
「小鳥がうたい、
花いっぱいの野原を
とっても気持ち良く歩いていたのに
先生やみんなの声がよぶから
仕方なくかえってきちゃった」
ということを
きいたことがあるでしょう。
九死に一生をえて生きかえった人も
よくいいますね――。


昨年の十二月 一週間の間に
姉と兄が旅立って逝きました。
年がついた仲の良い姉弟が
まるでつれだってゆくように。
納骨の日も偶然同じでした。

「ちっとも苦しまずに
楽しそうにゆきました。
まるでふっと向こうに渡って
しまったように。」
と姪たちの言葉を聞いて
私も子供の頃はあんなに恐かったのに
死ぬことがそんなに辛いことでも
無さそうに思えているのです――。

(1985.3.30)

 

 

沖縄のこころは悲しい

 


空の蒼さは はてしなく
雲の流れは ゆるやかに
どこへ行っても 迎えてくれる
ハイビスカスの 紅い花よ


沖縄の美しさの中で
沖縄のこころは悲しい


戦いに明け暮れた日
老人も母も子も
少年も少女も
しかばねを越え歩きつづけた


一木一草枯れ果てて
空の小鳥の声もなく


ひめゆりの乙女よ 健児らよ
黒髪もすずしい眉も
祖国のために捧げた
うらわかい生命よ


摩文仁の丘の断崖に立って
力尽き身を投げた人々よ


あまりにも美しい
空と海と風と波よ
あの日のことを知っている
悲しみをいただいた大地よ


沖縄の美しさの中で
沖縄のこころは悲しい

 

 

 

 


夢ゆりの可憐なる赤
胸に抱き
娘の笑顔我をなぐさめる


花かざり母の心を
ひきたてる
娘の心ただいとおしく


部屋いっぱい花をかざりて
明るげに
ふるまう姿いじらしくみゆ


入れかわり立ちかわり来る
子らをみて
よく育てしと幸せなりき


妻かえる日を待ちわびて
花を植え
終日庭にいる夫という


あまりにも多忙にすぎし
歳月を
とりもどしたし命ありせば

(1983.8.8)

 

 

 


どうしてこんなに涙が出るのか
ふっと感情がこみあげると
眼からいつでもあふれてくる。
泣けるということは
心が動いている証拠
生きている証しなのかもしれない。

(1985.2.22)

 

 

落葉松の道

 


からまつの 林をゆけば
むれて咲く あざみの花よ
からまつの 道をたどれば
むらさきの すみれの花よ
木もれ陽は ふりかかり
さわさわと 風のささやき
なつかしさ 胸にあふれる


からまつの 林をすぎて
たどりつく 山の湖
空をゆく 雲の白さよ
山脈(やまなみ)に 流れる霧よ
りんどうは 人待顔
よびかける こだまもおなじ
すぎし日の 友をしのぶよ

 

 

 

深秋

 


紫苑の花の 咲くころは
面影しのび 花かげで
泣いたあの日が なつかしい
深まる秋に むれ咲いて
むらさきの花 何思う


ざくろの花が 実るころ
ルビーのような 赤い実が
こぼれてほろり 涙ぐむ
人恋しさに たたずめば
空の蒼さが 目にしみる


すすきの穂波 ゆれるころ
岸辺にたてば 夕ぐれて
くれない燃ゆる 山脈よ
ゆきてかえらぬ 人の世の
逢うは別れの かなしさよ

 

 

燃える生命

 


寒椿のはなは
冬の空にさえざえと美しく咲いている。
寒さに耐えて 切ないほどに
燃えて咲く 花の姿は
私の心をゆさぶり 涙ぐませる。


一本の木がさながら 花束のように
燃えさかる ほのおのように
あますことなく 生命もやして
花びらは赤く 大地を染める。
そしてびっしりとついた蕾が
今日も明日も住んだえんじ色の花を開く
その美しさと激しさは息をのむようだ。


夏の初めから病んで、秋が過ぎ
季節はもう冬。
今、ようやく生命のたしかさを
覚えはじめた日々――。
「生命の限り生きよ」と
花は私に語りかけ
深いなぐさめを与えてくれる――。

 

 

 

沈丁花

 


一人娘の 卒業きまり
社会人
一歩ふみだす 春も近いよ

はばたけよ 生命の限り
思いきり
自己のゆく道 とらえてほしい


いきいきと うちこむ仕事
与えてよ
娘の才能 とどむことなく


目のさめる 美しさとなり
娘から
ニュージーランドの 旅の便りが


風光も 人情も良き
異国に
旅する声の はずむ嬉しさ


友だちが 友だちをよび
世界中
心のかよう 娘幸わせ


確実に 効きつつありと
医師の言う
胸のしこりは ちぢみつつあり


花咲きて 小鳥の歌う
庭に立ち
生きゆく力 湧くがごとくに


沈丁花 満開となり
ほのあまき
花の香流る 春の陽ざしよ

(1984.3.28)

 

 

春よ

 


待ちわびた 春があふれる
庭いっぱいに かがやく陽ざしよ。
クロッカスが紫と黄に
菜の花はふっくらと
しょかつ草の あわい紫が美しい。
梅の花も満開だ。


うぐいすはまだこないが、
頬じろが二羽枝にくる。
春告げる沈丁花は
せいいっぱいに 咲ききって
甘い香りが 庭に流れる


チューリップも 勢いよくのびて
あじさいの 新芽もふきだし
秋に咲く しおんの二葉もいっぱいだ。


美しい空と 美しい花たちと
小鳥の唄声に
生きている よろこびが
わたしの心に 湧いてくる。

(1984.4.8)

 

 

 

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