usa1999_b_top1.gif (2040 バイト)usa1999_b_home1.gif (2053 バイト)

慟哭


声あげて 只泣きふしぬ
失いし
乳房のあとの 痛々しさに


まざまざと見し 傷のあと
すさまじく
いのちとかえし 心の傷は


我が身体 かくも変わりし
悲しさに
肩震わせて ただ泣くばかり


悲しみは せきるるごとく
溢れ出て
涙のふちに たたずむ我は


目に見えて 傷なおりゆく
日は経ちて
心の傷は 深まるばかり

                   (1977.3.7)
   ――退院の日間近く、初めて傷を見し日に――

 

ふれあい


ふれあいの中で
同じことを感じ合えたら
こんな素晴らしいことはない。
みんなさみしく
小さな心を抱いて生きているのだもの。


心もとなくゆれる葦のように
弱々しく頼りないときも、
思いやりのあたたかさが
通いあえば
いつか心は満たされてゆく。

(1977.4.2)

 

 

お花をありがとう


春告げるスイートピーの花束を
あなたが届けてくれました。
フリージャの白い花との
ハーモニーが見事です。
ヒヤシンスの香りは
甘く部屋にみち
ランもバラもカーネーションも
ほほえんでいます。


一月半の入院の間
たえまなくたくさんのお花を
届けていただきました。
私の心はどんなに慰められたでしょう。
春告げる花の香りにつつまれて
退院の日間近く
私の心は期待に満ち
明るくはずんでいます。
みなさまほんとにありがとう。

(1977.3.9)

 

 

誕生日


「誕生日おめでとう。」
口々に祝ってくれる
家族がいることの幸わせよ。


今は生きることに感激を失っていても
やがて勇気を取り戻し
胸を張って、はずむ心で
未来を見つめる日がくるだろう。

(1977.4.2)

 

 

お守り

 


泣き虫、弱虫の少女に戻ったような
私のわがままを
精一杯受け止めて、
そっとそっとかばってくれた
主治医の先生。――
「お守りが大変ですよ。」と笑いながら
息子達にバトンタッチした退院の日。
「一人ではいられない。」という私を
いつもいつもいたわってくれる息子達。
誰かが必ず家にいて
どこかで私を見守っていてくれる。

(1977.4.9)

 

 

 


「お母さまよく生きてたねえ。」
「お母さまよく我慢したねえ。」
ガーゼを取り替えてくれるたびに
息子たちはなぐさめてくれる。――


お天気が悪いとキズをかばって
一日床の中。
気晴らしに何か食べに行こうか
そう思って起き出したら
「外は寒いから、おいしいものを
買ってこようか。何がいい?」
「おすしが食べたい。」
階段を駆け下りる音がして
やがて「特別製だよ。」と
おすしの折を持ってきてくれた。
思いやりが嬉しくて
涙を流しながら
「おいしいね。」と食べる私を
「泣きたい時は、泣けばいいよ。」
息子の声が優しく
つつんでくれる。――

(1977.4.9)

 

 

いたみ


キズがいたむ
しぼるように
はしるように
雨の前触れのように
失った乳房の慟哭のように。――


「元気になろう。元気になろう。」
ノーマルな神経はくりかえす。
涙を忘れたように
何日か暮らした筈が
ふとしたきっかけで
あふれだす。
わけもなく、ただわけもなく。
声をあげて身をよじって泣いた日より
もっと深いものが、
胸の底の底に沈んでいて
ふきあげてくるようだ。――

(1977.4.9)

 

 

社会復帰

 


まわりに心をくばりながら
自分のことは全てあとまわし
人の三倍は働いて着たと
言いきっていたのに
何も手につかない。


健康を失ったことで
もう仕事は放り出してしまおう。
ひたすら自分のことだけ考えようと
思っていたのに
社会は放っておかない。


電話をうけ、書類をめくりながら
誰のためでもない
自分のためにこそ
仕事が生きがいだったと
つくづく思う。――


私は今度の悲しみを
人びとの愛情と
仕事によって救われたのだ。


少しずつ少しずつ
元気がみちて
社会復帰が近づいているようだ。

(1977.4.9)

 

 

笑顔

 


心の傷を背負った人間が
家の中に甘えていると
大変だと思う。


自分の存在がまわりを暗くしないように
心がけねばと思う。


どんなにわだかまる想いがあっても
笑顔ではねのけて
生きて来た日のように。――

(1977.9.22)

 

 

あじさいによせて

 


精一杯咲くあじさいの
悲しくて
恋しさ胸にこみあげて泣く


あたたかき声ききしかと
ふと思う
逢いたさつのる梅雨のまにまに

恋しさにダイヤルまわし
ふととめる
指のふるえに心はまどう


あじさいの雨にうたれて
燃えて咲く
べに色胸の想いにも似て

(1977.6.23)

 

 

恐れ

 


夏の激しい日ざしの中で
そよともゆれぬ心をだいて
日を暮らす。


何を待っているのか。
何を恐れているのか。


こんな空しさはもういやだ
さざ波でもいい
心のゆらぐままに動きたい。

(1977.8.9)

 

 

抜ける

 


いたずらに恐れおののいて
暗く落ち込むより


手術後二十年、三十年
素晴らしい生き様をしている人達の
後姿を見つめてゆこう。


心の傷と仲良くして
前向きに取り組もう。


このごろ一つ抜けたのでしょうか。

(1977.9.21)

 

 

usa1999_b_mail1.gif (2047 バイト) usa1999_b_back1.gif (2049 バイト) usa1999_b_home1.gif (2053 バイト) usa1999_b_next1.gif (2045 バイト)